
労働安全衛生規則の改正により、2025(令和7)年6月1日から職場での熱中症対策が、罰則付きで、すべての事業者に義務づけられました。毎年5月~9月は、職場で熱中症を発症するケースが多く、特に梅雨明けは、体が暑さに慣れていないことに加えて暑さ指数が急激に上がるので、熱中症を発症しやすくなります。
この記事では、2026(令和8)年5月1日から9月30日まで、厚生労働省で実施される「令和8年STOP!熱中症クールワークキャンペーン」の内容とガイドライン、2026年4月から実施すべき職場での熱中症予防対策や熱中症予防教育の内容・教育用ツールなどについて詳しく解説します。
熱中症の死傷者数が多い業種は?
厚生労働省の「2025 年(令和7年) 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(速報値)」によると、令和7年職場での熱中症による休業4日以上の死傷者数は1,681人(うち死亡者数は15人)と記録的な猛暑となった平成30(2018)年の死傷者数1,178人(うち死亡者数は28人)より多くなっています。
また過去5年(2021~2025年)熱中症による死傷者数が多かった業種(その他を除く)は、
1位 製造業 1,013人 (うち死亡者数15人)
2位 建設業 996人(うち死亡者数48人)
3位 運送業 709人(うち死亡者数10人)
と製造業と建設業で多く発生しています。過去5年(2021~2025年)熱中症による死傷者数が多かった月は、
1位 7月(死傷者数2,145人うち死亡者数56人)
2位 8月(死傷者数1,935人うち死亡者数46人)
3位 6月(死傷者数593人うち死亡者数12人)
と過去5年(2021~2025年)の熱中症による死傷者5,273人の約4割が、7月に発症しています。
出典:厚生労働省「2025 年(令和7年) 職場における熱中症による死傷災害の発生状況
(令和7年 12 月末速報値)」
2026年4月~9月に実施すべき職場の熱中症対策は?ガイドラインは?
毎年、厚生労働省では、5月から9月までを「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」期間として、労働災害防止団体などと連携し、事業場への熱中症予防に関する周知・啓発活動などを実施しています。
3月19日厚生労働省HPで公表された、令和8年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」実施要綱によると、準備期間(4月)、キャンペーン期間(5月1日~9月30日)、重点取り組み期間(8月)に実施すべき事項は、下記の内容とされています。
【職場における熱中症防止のためのガイドライン】
| 第 1 目 的 等 | 職場における熱中症防止のために熱中症リスクに応じて行うことが望ましい具体的方法を示すことにより、事業者がその業種・業態に応じて適切 に選択して取り組むよう促すことを通じて、職場における熱中症防止を図ることを目的とする。事業者は、第2に基づき熱中症によるリスクを把握・評価した上で、その結果に基づき実施することが適切な対策を第3から選択して実施。 |
| 第2 熱中症リスクの評価 | 1 職場において熱中症リスクとなり得る暑熱に関する有 害 性 の 要 因 の 特 定 2 湿 球 黒 球 温 度 の 値 ( W B G T 値 ) の 把 握 JIS B 7922等に適合したWBGT指数計で実測 3 熱 中 症 リ ス ク の 評 価 ・ 検 討 |
| 第 3 熱 中 症 リ ス ク に 応 じ た 措 置 | 1 労 働 衛 生 管 理 体 制 の 確 立 等 2 作 業 環 境 管 理 3 作 業 管 理 4 健 康 管 理 5 労 働 衛 生 教 育 6 異 常 時 の 措 置 7 そ の 他 |
| 図 表 等 | ・身体作業強度等に応じたWBGT基準値 ・熱中症の症状と分類 ・衣類の組合せによりWBGT値に加えるべき着衣補正値(℃ーWBGT) ・熱中症による健康障害発生時の対応計画 ・熱中症の発症に影響を及ぼすおそれのある疾病の特徴等 |
| 各期間に実施すべき事項 | |
| 準備期間 (4月) | 「職場における熱中症防止のためのガイドライン」を踏まえた準備、事前確認、検討等を重点的に行う |
| キャンペーン期間 (5月1日~9月30日) | 「職場における熱中症防止のためのガイドライン」に基づく措置を実施する |
| 重点取り組み期間(7月) | 当該措置の確実な実施、取組状況の総点検、必要に応じた追加対策の検討等を行う。 |
出典:厚生労働省「令和8年『STOP!熱中症 クールワークキャンペーン』実施要綱令和8年3月 19 日制定」
管理職や社員に必要な熱中症予防教育の内容は?
厚生労働省の「職場における熱中症防止のためのガイドライン」によると、事業場で熱中症防止対策を的確に行うためには、対策に関わる熱中症予防管理者、職長等現場で作業従事者を指揮する者及び作業従事者に対し、それぞれ(1)~(3)の熱中症に関連した労働衛生教育を行うことが望ましいとされています。
(1)熱中症予防管理者労働衛生教育(必要に応じて衛生管理者や安全衛生推進者も受講することが望ましい。)
| 事 項 | 範 囲 | 時間 |
| (1)熱中症の症状* | ・熱中症の概要 ・職場における熱中症の特徴 ・体温の調節 ・体液の調節 ・熱中症が発生する仕組みと症状 | 30分 |
| (2)熱中症の予防方法* | ・熱中症リスク要因と WBGT(意味、WBGT 基準値に基づく評価) ・作業環境管理(WBGT 値の低減、休憩場 所の整備等) ・作業管理(作業時間の短縮、暑熱順化、 水分及び塩分の摂取、服装、作業中の巡 視等) ・健康管理(健康診断結果に基づく対応、 日常の健康管理、作業従事者の健康状態 の確認、身体の状況の確認等) ・労働衛生教育(作業従事者に対する教育 の重要性、教育内容及び教育方法) ・熱中症予防対策事例 | 150分 |
| (3)緊急時の救急処置 | ・報告体制の整備及び周知・手順等の作成 及び周知 ・緊急時の救急措置 | 15分 |
| (4)熱中症の事例 | 熱中症の災害事例 | 15分 |
| (5)関係法令等 | 熱中症の関係法令等 | 15分 |
*対象者の熱中症に対する基礎知識の状況に応じ、(1)及び(2)をそれぞれ15分、75分に短縮して行うこととして差し支えない。
(2)職長等現場で作業従事者を指揮する者向け教育
| 事 項 | 範 囲 | |
| (1)熱中症の症状 | ・熱中症の概要 ・職場における熱中症の特徴 ・熱中症が発生する仕組みと症状 | 10分 |
| (2)熱中症の予防方法 | ・作業環境管理(WBGT 値の低減、休憩場 所の整備等) ・作業管理(作業時間の短縮、水分及び塩 分の摂取、服装、作業中の巡視等) ・健康管理(日常の健康管理、作業従事者 の健康状態の確認、身体の状況の確認 等) ・熱中症予防対策事例 | 25分 |
| (3)緊急時の救急処置 | ・報告体制の整備及び周知・手順等の作成 及び周知 ・緊急時の救急措置 | 10分 |
| (4)熱中症の事例 | 熱中症の災害事例 | 10分 |
| (5)関係法令等 | 熱中症の関係法令等 | 5分 |
*(1)の熱中症予防管理者労働衛生教育の受講で代替可能。
(3)作業従事者向け教育(短時間で、繰り返すことが望ましいこと。)
| 事 項 | 範 囲 |
| (1)熱中症の症状 | ・熱中症の概要 ・職場における熱中症の特徴 ・体温の調節 ・体液の調節 ・熱中症が発生する仕組みと症状 |
| (2)熱中症の予防方法 | ・WBGT の意味 ・現場での熱中症予防活動(暑熱順化、水分及び塩分の摂取、服装、日常の健康管理等) |
| (3)緊急時の救急処置 | 緊急時の救急措置 |
| (4)熱中症の事例 | 熱中症の災害事例 |
教育の実施時期については、雇入れ時教育の機会に行うなど、事業場の実情を踏まえたものとし、
簡単な教材でも繰り返し参照することが望ましいとされています。
出典:厚生労働省「職場における熱中症防止のためのガイドライン」
熱中症予防教育で使用する教材は?
「職場における熱中症防止のためのガイドライン」によると、熱中症予防教育用教材として、厚生労働省が運営しているポータルサイトに掲載しているものが活用できるとされています。
厚生労働省のポータルサイトと環境省の熱中症予防情報サイトには、下記表の動画や資料などが掲載されています。
| 厚生労働省のポータルサイト「学ぼう!備えよう!職場の仲間を守ろう!職場における熱中症予防情報」 | ・「理解度確認クイズ付き講習動画」 ・「専門講師が解説する講習動画」 ・「職場における熱中症予防について(動画)」 ・中小企業の事業主、安全・衛生管理担当者、現場作業者向け「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド(PDF資料)」 ・熱中症予防対策について点検すべき事項をまとめたリーフレット等 |
| 環境省の熱中症予防情報サイト | ・熱中症対策関連情報「熱中症について学べる動画」 ・救急措置等の要点が記載された携帯カード「熱中症予防カード」 |
出典:厚生労働省ポータルサイト「学ぼう!備えよう!職場の仲間を守ろう!職場における熱中症予防情報」
出典:環境省の熱中症予防情報サイト「熱中症対策関連情報~熱中症について学べる動画」
安全衛生法で義務付けられている雇い入れ時の安全・衛生教育とともに、熱中症予防教育も実施しておきましょう。
まとめ
厚生労働省「職場における熱中症防止のためのガイドライン」の「熱中症リスクに応じた措置」のひとつに「健康管理」があります。朝食を食べていない人や睡眠不足の人、体調不良の人、前日に多量の飲酒をした人、体が暑さに慣れていない人は、熱中症の発症リスクが高いです。仕事開始前に朝食摂取の有無などを確認し、職場の見回り回数や休憩時間を増やし、熱中症による労災を防止しましょう。
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