総務省統計局HP「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」によると2023年の総人口に占める高齢者人口の割合は、過去最高の29.1%だったということです。15歳以上の就業者総数に占める高齢就業者の割合は、13.6%と過去最高となり、今や高齢就業者は、貴重な労働力となっています。
出典:総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-
この記事では、2025(令和7)年4月1日からの希望者全員65歳まで雇用義務化と定年を65歳以上へ引上げた場合などの高年齢労働者に関する助成金について、詳しく解説します。
2024年高年齢・障害者雇用状況報告書の提出期限は?
現在、会社が定年を定めるときは、60歳以上にしなければなりません。
(高年齢者雇用安定法8条)
定年の年齢が65歳未満の会社は、高年齢者雇用確保措置として
(1)定年の年齢を65歳以上にする
(2)65歳までの*継続雇用制度を導入(再雇用制度・勤務延長制度)
(3)定年制を廃止
のうちどれかを制度として導入することが義務づけられ、毎年6月1日現在の高年齢者の雇用状況の報告が必要です。
2024(令和6)年6月1日から、報告書の受付が始まり、提出期限は、2024(令和6)年7月16日(火)までとなっています。
令和6年高年齢者・障害者雇用状況報告書の提出や記入例などに関する詳細は、厚生労働省ホームページをご参照ください。
参照:厚生労働省「令和6年高年齢者・障害者雇用状況報告の提出について」
2025年4月から希望者全員65歳まで雇用義務化!定年年齢は何歳?
ところで、上記(2)65歳までの*継続雇用制度の適用者は、原則として「希望者全員」です。
平成25年3月31日までに労使協定により制度適用対象者の基準を定めていた場合は、その基準を適用できる年齢を2025(令和7)年3月31日までに段階的に引き上げなければなりません(平成24年改正法の経過措置)。
(高年齢者雇用安定法第9条)
よって、就業規則の定年退職に関する規定で、
第●●条 社員の定年は満60歳とし、60歳に達した月の末日をもって退職とする。
2 定年到達者が、再雇用を希望した場合は、希望者全員を定年退職日の翌日から1年ごとの個別の労働契約を交わし、嘱託職員として満64歳まで再雇用する。
3 前項の者が、引き続き雇用を希望した場合、労使間で締結した「継続雇用制度における選定基準等に関する協定書」の選定基準及び取扱方法により、個別の労働契約を交わし、65歳まで再雇用する。
となっている場合は、2025(令和7)年4月1日から希望者全員を65歳まで再雇用すると変更する必要があります。
なお65歳定年が、義務付けられるわけではないため、2025年4月以降も60歳定年でも、上記(2)が導入されていれば、問題ありません。
厚生労働省の令和5年「高年齢者雇用状況等報告」(6月1日現在)の集計結果によると、65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業は99.9%[対前年差変動なし]となっています。
65歳までの高年齢者雇用確保措置の措置内容別の内訳は、
(1)「定年の引上げ」により実施している企業は26.9%[対前年差1.4ポイント増加]
(2)「継続雇用制度の導入」により実施している企業が69.2%[対前年差1.4ポイント減少]
(3)「定年制の廃止」により実施している企業は3.9%[対前年差変動なし]
と「継続雇用制度の導入」により実施している企業が約7割で、「定年の引上げ」により実施している企業は前年に比べ1.4ポイント増加しています。
出典:厚生労働省「令和5年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します令和5年12月22日(金)」
2021年4月から施行された改正高年齢者雇用安定法とは?
2021年4月1日から、改正高年齢者雇用安定法が始まりました。希望者全員が働ける年齢を、現在の65歳から70歳にすることが「努力義務」となっています。70歳までの就業支援の方法は、下記①~⑤のいずれかとされています。
① 70歳までの定年引上げ
② 70歳までの継続雇用制度の導入
③ 定年退職制度廃止
また高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に④及び⑤の制度を導入
④ 業務委託契約を締結する制度
⑤a.事業主が自ら実施する社会貢献事業に従事できる制度
⑤b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業に従事できる制度
出典:厚生労働省「高年齢者雇用安定法改正の概要~70歳までの就業機会の確保のために事業主が講ずるべき措置(努力義務)等について~令和3年4月1日施行」
厚生労働省の令和5年「高年齢者雇用状況等報告」(6月1日現在)の集計結果によると、70歳までの高年齢者就業確保措置を実施済みの企業は、29.7%と前年より1.8ポイント増加しています。
企業の規模別に見ると、中小企業では30.3%[1.8ポイント増加]、大企業では22.8%[2.4ポイント増加]と人手不足を背景に、大企業より中小企業の方が実施割合が高くなっています。
出典:厚生労働省令和5年「高年齢者雇用状況等報告」(6月1日現在)令和5年12月22日公表
定年年齢を65歳以上に引き上げた時の助成金は?
2024年4月1日から、「2024年問題」と言われる運送・物流会社などの自動車運転手や建設業・医師などにも、時間外労働の上限規制が適用されます。
1年間に残業できる上限時間数については、下記の記事をご覧ください。
人手不足が深刻な業種においては、高年齢労働者の定年年齢の引き上げをするケースが増えています。
65歳以上への定年引上げなど、65歳超の労働者に関する雇用推進助成金は、下記の3つがあります。
65歳以上への定年引上げ、定年の定めの廃止、希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入、他社による継続雇用制度の導入のいずれかを実施した事業主に対して助成するコース
(2)65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース)
高年齢者向けの雇用管理制度の整備等に係る措置を実施した事業主に対して助成するコース
50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用に転換させた事業主に対して助成を行うコース
出典:厚生労働省「令和6年度65歳超雇用推進助成金について」
また、60歳から64歳までの高年齢労働者の処遇の改善に向けて、就業規則や労働協約の定めるところにより、高年齢労働者に適用される賃金に関する規定または賃金テーブルの増額改定に取り組む事業主に対して「高年齢労働者処遇改善促進助成金」が支給されます。
詳細は、支給要件や申請書のダウンロードは、厚生労働省ホームページをご覧ください。
出典:厚生労働省「高年齢労働者処遇改善促進助成金」
まとめ
高年齢労働者が増えたことを受け、転倒災害による骨折など労災が増えています。高年齢労働者の労災事故は、休業4日以上が必要なケースが多いため、労働安全衛生法で義務付けられている雇い入れ時の安全・衛生教育をしっかりと行い、労災の防止に努めましょう。
65歳超雇用推進助成金の申請のため、就業規則の診断・変更・作成のご依頼については、下記をご覧ください。
下記の記事もご覧ください。