学生アルバイトに休憩時間は必要?成年年齢18歳に引き下げで労働基準法の「年少者に対する保護規定」への影響は?

2022年4月1日から、成年年齢が18歳に引き下げられました。労働基準法には、高校生等の満18歳未満の年少労働者を夜10時以降働かせてはいけないなど「年少者に対する保護規定」があります。この記事では、学生アルバイトにも休憩時間が必要なケースや深夜シフトに入れない学生アルバイト、成年年齢の引き下げによる年少者に対する保護規定への影響、雇用保険・健康保険・厚生年金の加入対象になる学生アルバイトの要件について、詳しく解説します。

勤務時間が6時間ピッタリの学生アルバイトにも休憩時間は必要?

2024(令和6)年4月1日~7月31日まで、厚生労働省で「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーンが実施されています。重点的に呼びかける事項として、

(1)労働条件の明示

(2) シフト制労働者の適切な雇用管理

(3)労働時間の適正な把握

(4)商品の強制的な購入の抑止とその代金の賃金からの控除の禁止

(5)労働契約の不履行に対してあらかじめ罰金額を定めることや労働基準法に違反する減給制裁の禁止

が挙げられています。

出典:厚生労働省「令和6年度『アルバイトの労働条件を確かめよう!』キャンペーンを全国で実施します」

高校生など学生のアルバイトも労働者なので労働基準法が適用され、1日の労働時間は、原則8時間まで、1週間の労働時間は40時間までとされています。また労働時間が6時間を超え8時間までの時は、労働時間の途中で45分以上、労働時間が8時間を超える時は途中で1時間以上の休憩時間を与えなければなりません。なお1日の労働時間が、6時間ピッタリ(6時間00分)の時は休憩時間は不要です。

また毎週1日以上の休日を、一暦日(午前0時~午後12時までの継続した24時間)で与えなければなりません。

学生のアルバイトも、雇い入れた日から6か月継続勤務(試用期間・休職期間・長期病欠期間も含めて通算)し、全労働日の8割以上を出勤した労働者に、原則として10日以上の年次有給休暇を与えなければなりません。

週1バイトの高校生など学生アルバイトなど、所定労働日数が少ないパート・アルバイトなどは、所定労働日数に応じて年次有給休暇が比例付与されます。

所定労働日数が少ないパート・アルバイトなどに、比例付与される年次有給休暇の日数など詳細は、下記の記事をご覧ください。

労働基準法の労働できる最低年齢は何歳?

労働基準法では、年少者の健康及び福祉の確保等の観点から、高校生等の満18歳未満の年少労働者に対して、様々な制限(年少者に対する保護規定)が設けられています。

労働基準法で、使用者は児童(満15歳に達した日以後最初の3月31日が終了するまでの者)を使用してはいけないとされています。(労働基準法第56条第1項)

ただし非工業的事業に関する職業(旅館や飲食店・娯楽場などの業務は除く)で、児童の健康および福祉に有害でなく、その労働が軽易なものについては、所轄労働基準監督署長の許可を得る事で満13歳以上の児童を修学時間外に使用することができます。また映画製作・演劇の事業については、所轄労働基準監督署長の許可を得る事で満13歳未満の児童を子役で、修学時間外に使用することができます。

(労働基準法第56条第2項)

深夜シフトに入れない学生アルバイトとは?

労働基準法の「年少者に対する保護規定」では、高校生等の満18歳未満の年少労働者に、36協定による時間外労働や休日労働を行わせることを禁じるなど、様々な制限が設けられています。

この制限には、下記の表のように中学生などの満15歳に達した日以後最初の3月31日が終了するまでの児童と、高校生等の満18歳未満の年少者への保護規定の適用があります。

【労働基準法の「年少者に対する保護規定」が適用されるもの】

                    児童年少者・未成年者 成年者
      年齢区分満15歳に達した日以後最初の3月31日が終了するまでの者満18歳未満満18歳以上
①労働条件の明示
(労働基準法第15条)      
⓶賃金の支払
(労働基準法第24条)
③労働時間
(労働基準法第32条)
④休憩時間
(労働基準法第34条)
⑤休日(労働基準法第35条)
⑥未成年者の労働契約締結の保護(労働基準法第58条)
⑦未成年者の賃金請求権
(労働基準法第59条)
⑧年齢証明書等の備付け
(労働基準法第57条)
⑨労働時間・休日の制限
(労働基準法第60条)
⑩深夜業の制限
(労働基準法第61条)
⑪危険有害業務の制限
(労働基準法第62条)
⑫坑内労働の禁止
(労働基準法第63条)
⑬帰郷旅費
(労働基準法第64条)

よって、高校生など満18歳未満のアルバイトを夜10時以降の深夜シフトに入れることはできません。

なお満15歳以上※満18歳未満の年少者については、下記の定めにより*変形労働時間制と午後10時~翌日午前5時の深夜業を行うことができます。

*変形労働時間制(1か月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制、1週間単位の非定型的変形労働時間制、フレックスタイム制)

※満15歳に達した日以後最初の3月31日が終了するまでの者を除く

   原則              例外
変形労働時間制   禁止 満15歳以上※満18歳未満の者は下記のアまたはィのいずれかの定めで労働できる
ア 1週40時間を超えない範囲で、1週間のうち1日の労働時間を4時間以内に短縮する場合において、他の日の労働時間を10時間まで延長する場合
イ 1週48時間、1日8時間を超えない範囲内において1か月または1年単位の変形労働時間制を適用する場合
深夜業労働禁止の時間帯    
・児童は午後8時~翌日午前5時
・年少者は午後10時~翌日午前5時
厚生労働大臣が必要と認める場合は、地域または期間を限って労働が
禁止される深夜の時間を下記の時間帯にできる
・児童は午後9時~翌日午前6時の労働禁止
・年少者は午後11時~翌日午前6時の労働禁止

成年年齢の引き下げによる年少者に対する保護規定への影響は?

2022年4月1日から、成年年齢が18歳に引き下げられました。これまで下記の⑥と⑦については、18歳以上20歳未満の者にも適用されていましたが、成年年齢が18歳に引き下げられたことを受け適用対象外となっています。

⑥「未成年者の労働契約締結の保護」

労働契約は本人が結ばなければならず親や後見人が代わって結ぶことができない(労働基準法第58条)

⑦「未成年者の賃金請求権」

未成年者は独立して賃金を請求する権利があるため、労働者本人に支払わなければならず、親権者や後見人が代わって受け取ることはできない(労働基準法第59条)

学生アルバイトに労働条件通知書を渡すことや安全衛生教育は必要?

高校生などの学生アルバイトを採用する時も、賃金や労働時間などの労働条件を記載した書面(労働条件通知書や労働契約書など)を渡すなどの方法で労働条件を明示しなければなりません。労働基準法施行規則5条の改正で、2024年4月1日から労働条件通知書などに新たに記載が必要な労働条件の項目が増えています。

新たに記載が必要になった項目などの詳細については、下記の記事をご覧ください。

また労働安全衛生法や労働者災害保険法も適用されるので、雇入れた時は仕事に必要な安全衛生教育の実施が必要で、仕事や通勤が原因の病気やケガをした場合は労災保険給付が受給できます。学生アルバイトで、年に1回定期的に健康診断の受診が必要な人、夜勤のシフトに入っている学生アルバイトで6か月以内ごとに1回健康診断の受診が必要なケースについては、下記の記事をご覧ください。

雇用保険・健康保険・厚生年金の加入対象になる学生アルバイトは?

学生アルバイトでも、下記の要件に該当する場合は、雇用保険や健康保険・厚生年金保険の加入対象となります。

                 加入対象者
雇用保険  (1) (2) の両方に該当するときは、雇用保険の被保険者となる
(1)31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者で、次のいずれかに該当する場合
・期間の定めがなく雇用される場合
・雇用期間が31日以上である場合
・雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇止めの明示がない場合
・雇用契約に更新規定はないが同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績がある場合
(2)1週間の所定労働時間が 「20 時間以上」であること。
(3) 昼間学生は原則対象外。通信教育、夜間、定時制の学生は被保険者となる。
下記に該当する昼間学生は、被保険者となる。
・卒業見込み証明書を有する者で卒業前に就職し、卒業後も引き続き同一の事業主に勤務することが予定され一般労働者と同様に勤務し得ると認められる場合
・休学中の者
・事業主の命によりまたは、事業主の承認を受け雇用関係を存続したまま大学院などに在学する者
一定の出席日数を課程修了の要件としない学校に在学する者であって、同種の業務に従事する他の労働者と同様に勤務し得ると認められる者
健康保険
厚生年金  
健康保険・厚生年金保険に加入している会社・商店などの適用事業所に常用的に使用される(1)~(3)いずれかに該当する人(国籍や性別、年金の受給の有無にかかわらず)*
(1)正社員などフルタイムの従業員
(2)1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が(1)の3/4以上ある従業員
(3)1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が(1)の3/4未満の従業員で「特定適用事業所」「任意特定適用事業所」または「国・地方公共団体に属する事業所」に勤務し、下記a~dのすべてに該当する者
a 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満(残業時間は含まない)
b 所定内賃金(基本給および諸手当)が月額8.8万円以上
c 2ヶ月を超える雇用の見込みがある
d 学生ではない。(休学中や夜間学生は加入対象)

*臨時に使用される人・季節的業務に使用される人を除く

aは、週所定労働時間が40時間の企業の場合で、契約上20時間に満たない場合でも、実労働時間が2ヶ月連続で週20時間以上となり、引き続くと見込まれる場合には、3ヶ月目から健康保険・厚生年金保険に加入する必要があります。

bについては、下記の賃金は含まれません。

  • 1月を超える期間ごとに支払われる賃金 (賞与等)
  • 時間外労働、休日労働及び深夜労働に対して支払われる賃金(割増賃金等)
  • 最低賃金に算入しないことが定められた賃金(精皆勤手当、通勤手当及び家族手当)

なお健康保険・厚生年金保険(3)の「特定適用事業所」とは、1年のうち6月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が、101人以上(2024年10月からは51人)となることが見込まれる企業等のことです。

出典:日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」

上記のように、学生アルバイトであっても、休学中や夜間学生などは、雇用保険や健康保険・厚生年金保険に加入しなければならないのでご注意ください。

まとめ

冬休みに入り、就業調整などのパートタイマーの代わりに学生アルバイトを雇うというケースが増えますが、学生アルバイトにも週1日以上の休みが必要で、満18歳未満のアルバイトは夜勤シフトに入れないなど年少者の保護規定などにご注意ください。

下記の記事もご覧ください。

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